8『人材は「不良社員」からさがせ』
天外伺朗=著
(講談社)
「……問題なのは、むしろ失敗したとき、もしくは失敗しそうなときです。良い子たちはいち早く安全圏に身を置きますからネ。トップの姿勢や失敗の影にはものすごく敏感です。その引き際の早さは目を見張るほどです。トップがプロジェクトの先行きに不安になったとたん、そのプロジェクトの悪い点をどんどんトップに報告に行きます。--私は最初から反対だったんですけど--といって、昨日までの自分の発言を否定してしまいます」
「……そうそう、そのスケープゴートってやつですよ。スケープゴートにされた人材は、多くの場合、不良社員に化けるか、もしくは不良社員というレッテルが貼られています。だから人材をさがすときには、過去にスケープゴートにされた人に当たると、確率が高いのですよ……」
「そう、そう。その組織の目的が戦争をすることだったら、本当に必要なのは戦上手の武士のはずです。ところが、サロン化している組織では、そのかけがえのない武士を不良社員というレッテルを貼って追い出してしまうのですよ」
「人材は修羅場で育ちます。それも成功する修羅場でのみ育ちます」
「感情的抗争がなければ、会議は和気あいあいになり、ジョークがポンポンと飛び交うようになる。人々は保身に気を使うこともなく、リラックスしてアイディアも出るし、物事を能動的に進めていける。何よりもこだわりがないため、物事の本質は何かというところにみなの意識が向かうことができる」
「過去にも未来にも逃げない」
「専門を分散させる」
「"人材"のひとつの定義は、"内発的動機"の声がちゃんと聞こえる人、逆に"良い子"は"外発的動機"だけで行動する人、ともいえる。成果主義を導入した会社がおかしくなるケースが多いが、"外発的動機"を前面に押し出すことで、誰も"フロー"に入れなくなり、"良い子"ばかりが張り切って、"人材"が駆逐されてしまうことが"フロー理論"から解き明かせる」
「机に座って、鉛筆ナメナメつくった戦略は、まずクソの役にも立ちまへん」
「……だいたい、生きた戦略というのは、必ずしも言葉で表現できるものではないですし、紙の上にも書けないのです」
「戦略というのは、成功のためのシナリオと思えばいいでしょう。ただし、ドラマのシナリオと違うところは、相手のせりふは書けないことです」
「じっと机に座って考えるような戦略家は、まず偽物です」
「まず、生きた戦略は生きた情報がなければ立てられない。雑誌や新聞の情報からまともな戦略が立てられるわけはないし、アンケート調査やインタビューで本当の情報が入手できるはずはない。D博士によれば、本物の、生きた情報は、他人より速く行動する人のところに、ひとりでに集まってくるという。どういう原理なのかよくはわからないが、行動のスピードと情報の吸引力は正比例するという」
「つまり、生きた戦略というのは、固定したものではなく、速いスピードの行動とともに融通無礙に変化するのです。情況に応じて、やり方を変え、方向を変え、つぎに何をやればよいかに全身全霊を傾けるわけです。心を空しくしてです。したがって、本物の生きた戦略というのは、概略の方向性に加えて、むしろ姿勢とか、心構えとかいってもいいくらいです」
「机に座って考えても、文献を読んでも、インタビューに行っても(なかなか本音は聞けないので)、どうせ腐った情報しか集まらない。それより手近な目標を攻撃するほうが、よほど戦略を練るのに役に立つという論理らしい。手近な目標を短期間に攻めて、成功したなら、今度はそこまで駒を進めて、新たな展開をはかる、という方法論のようだ」
「世の中のトレンドを見切る」
「ビッグ・プロジェクトは危険」
「本文でも述べているように、ここで触れている戦略というのは、大勢の人数と莫大な予算をつぎ込む、正規軍の働きではない。戦争ならゲリラ戦、企業ならベンチャーの戦い方だ。ゲリラは"フロー"で戦う。武器も人数も圧倒的に劣るゲリラが、なぜ大軍を翻弄できるかというと、"燃える集団"になるからだ。"燃える集団"になり切れなかったゲリラは、あっという間に戦力的に優位な正規軍に殲滅される」
「よく、せっかく先進的な提案をしたのにトップにつぶされたと嘆く人がいるが、先進的な企画をトップが理解してくれるという期待が、そもそも甘い。トップが反対する中でも、成功への"運"をつかんでいく"燃える集団"の偉力を信じることができれば、突破する可能性が高まる。嘆いていると、その"運"は逃げていく」
「"人材"は管理を嫌う。指示・命令されても活きない。おとなしく鎖につながれて、ご主人に尻尾を振る飼い犬ではなく、野原を自由に駆け回る狼なのだ。よくしつけられた猟犬なら、ご主人の狩りの役に立つだろう。でもその犬は、本来の野性の発揮は抑えられ、能力は殺され、ひたすら従順に行動するようにしつけられている。従来の企業経営は、従業員をそういうふうにしつけてきた。経営者が優秀なら、それでも業績が上がった。狼も集団で狩りをする。でもそれは、誰かの指示のもとに動くのではなく、一匹一匹が最大限に野性の本能を発揮し、集団の中における自らの役割を把握し、結果的に一糸乱れぬチームワークを発揮していく」
「野性の本能を発揮している状態が"フロー"であり、最近では"フロー経営"という言葉も定着してきた。従業員を鎖につないだら、誰も"フロー"には入れない」
続きは、今すぐこちらから。
👇