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傍観者の刑事が

無視できなくなる事件相談

企業犯罪VS知能犯刑事

麻布署6年の研究と発見 第5回

· 傍観者,刑事,無視,相談,事件

こんばんは!

榎本澄雄です。

8月10日、日曜日。

明日は、山の日ですね。

4月30日

遺体が発見された

川崎ストーカー殺人事件で

警察の捜査怠慢が厳しく批判されています。

川崎ストーカー事件 命救えなかった責任重い

https://mainichi.jp/articles/20250511/ddm/005/070/064000c

 

あまりにズサン…川崎ストーカー事件で20歳女性見殺しの神奈川県警を待ち受ける「最悪のシナリオ」

https://diamond.jp/articles/-/364552

 

元交際相手、殺人罪で起訴 川崎遺棄・ストーカー事件

https://www.asahi.com/articles/DA3S16273221.html

以前に私が連載していた記事では、

怠慢な刑事に適正捜査してもらう方法について書きました。

殺人事件やストーカー事件ではなく、

詐欺など知能犯事件の告訴相談方法ですが、

必ず、皆さんの役に立つと確信しているので紹介します。

傍観者の刑事が

無視できなくなる事件相談

企業犯罪VS知能犯刑事

麻布署6年の研究と発見 第5回

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2020年10月8日から

2021年11月2日まで

私がリスク対策.comに

連載していた記事を紹介します。

リスク対策.com

危機管理とBCPの専門メディア

https://www.risktaisaku.com

私はリスク対策.comから撤退し、

過去の記事を削除してもらったので、

現在は閲覧ができない状態となっています。

👇

2021年3月16日 リスク対策.com

『企業犯罪 VS 知能犯刑事 麻布署6年の研究と発見』

100年企業の成長を今すぐ守る!「捕食者」の検分方法~その3

第5回 刑法第246条 詐欺罪

https://www.risktaisaku.com/articles/-/48604

第1回の記事はこちらです。

👇

テレビでは解説されない刑事事件

企業犯罪VS知能犯刑事

麻布署6年の研究と発見 第1回

https://www.kibiinc.co/blog/2024-11-22

第2回の記事はこちらです。

👇

横領するパワハラ犯人

企業犯罪VS知能犯刑事

麻布署6年の研究と発見 第2回

https://www.kibiinc.co/blog/2024-12-24

第3回の記事はこちらです。

👇

なぜ詐欺師が得するのか?

企業犯罪VS知能犯刑事

麻布署6年の研究と発見 第3回

https://www.kibiinc.co/blog/2025-2-3

第4回の記事はこちらです。

👇

「家族が被害に遭いました。どうすれば助けられますか?」

企業犯罪VS知能犯刑事

麻布署6年の研究と発見 第4回

https://www.kibiinc.co/blog/2025-6-11

こんにちは。元知能犯刑事、榎本澄雄です。

 

今回は「100年企業の成長を今すぐ守る!『捕食者』の検分方法~その3 第5回 刑法第246条 詐欺罪」というテーマです。

 

ポイントは三つ。

1 なぜ、詐欺師は逃げないのか?~詐欺師の生態

2 なぜ、詐欺事件の捜査は進まないのか?~告訴相談の切り開き方

3 どのように詐欺師を見分ければ良いのか?~詐欺師の見分け方

です。

前回は「なぜ、詐欺事件の捜査は進まないのか?~告訴相談の切り開き方」がメイントピックでした。「まともな知能犯刑事に出会える1%の確率」「管轄警察署のたらい回しにどのように対抗するか」「騙されてはいけない知能犯刑事の特徴」などについてお話ししました。

 

「家族が被害に遭いました。どうすれば助けられますか?」

企業犯罪VS知能犯刑事

麻布署6年の研究と発見 第4回

https://www.kibiinc.co/blog/2025-6-11

今回は「なぜ、詐欺事件の捜査は進まないのか?~告訴相談の切り開き方」の続きです。「疑惑の相談簿」「詐欺事件の告訴相談をしたのに、何の記録にも残してないって、刑事さんそれってどう言うことですか?」「事件相談が打開できる9つのステップ」「私が騙された事件と相手の詐欺師について、注意喚起のためSNSで拡散したいのですが、どう思いますか?」などについて、お話しします。

疑惑の相談簿

詐欺事件ではありませんが、2019年10月に福岡県太宰府市で36歳の主婦が約1カ月にわたり、女性と男性に監禁・暴行され死亡した事件(太宰府市主婦暴行死事件)がありました。報道によると、被害者の親族は佐賀県警に合計14回、相談していたとのことですが、事件化されないままに被害者は死亡。遺族が当時の「相談簿」を取り寄せたところ、警察内部の判断では「事件は解決している」と記載されており、相談当時の状況から警察の捜査怠慢が問題視されています。批判を受けた当時の県警本部長は体調不良を理由に退任しました。

 

相談簿とは、被害者や被害関係者が警察に事件相談に来た際、事情を聞いた警察官が必ず、作成するものです。警察では過去にストーカー事件の相談を迅速に捜査しなかったため被害者が死亡した事件(桶川ストーカー殺人事件)があり、私が警察にいた当時から相談簿の運用・管理はかなり厳格に行われていました。

 

具体的には刑事(捜査員)が事件相談を受けると、犯罪が成立するかどうかに関わらず、すぐに警察署の端末から警察本部の相談等管理システムに相談内容を入力します。システムに登録が終わったら、相談簿を出力して、警察署の場合は課長、副署長、署長と必ず持ち回りで決裁を受けます。決裁権者の各幹部も相談事案を事件化すべきかどうか、どのように捜査するのか、かなり突っ込んで担当官に質問して来ることが常でした。事件相談を適切に処理しないことは、被害の拡大という「市民の脅威」であり、さらには警察不祥事になり得る「警察の信用失墜行為」だからです。

太宰府市主婦暴行死事件

佐賀県警本部長が“体調不良”で交代

新本部長「最重要案件」と発言も従来の主張繰り返す

https://www.fnn.jp/articles/-/150080

 

詐欺被害の女性、警察に相談したら「事件にならないと言われ絶望」…県公安委が県警を指導「適切さ欠ける対応」

https://www.yomiuri.co.jp/national/20240404-OYT1T50046/

 

鹿児島県警 警官が詐欺相談に不適切対応「個人の貸し借り。事件にならない」 開示請求文書には事実と違う記載…虚偽公文書作成の疑いで書類送検

https://373news.com/news/local/detail/200691/

ここで「警察職員の職務倫理及び服務に関する規則第5条 信用失墜行為の禁止」の条文をチェックしておきましょう。

警察職員の職務倫理及び服務に関する規則

第5条(信用失墜行為の禁止)

警察職員は、国民の信頼及び協力が警察の任務を遂行する上で不可欠であることを自覚し、その職の信用を傷つけ、又は警察の不名誉となるような行為をしてはならない。

「詐欺事件の告訴相談をしたのに、何の記録にも残してないって、刑事さんそれってどう言うことですか?」

先日、私の友人がある被害に遭ったと警察署へ相談に行ったそうです。その後、事件の進捗がよくわからないため不安に思って、私に相談して来ました。私はあくまでも友人として今回の記事に書いたようなアドバイスを簡単に伝えて「相談簿の受理番号」を聞くように言いました。そして友人が後日、警察署へ電話で「相談簿の受理番号を教えて欲しい」と尋ねたところ、何とその担当官は「相談簿を作成していなかった」そうなのです。

告訴等相談簿

私の記憶では、生活安全課に対するストーカー相談などの記録は、「生活安全相談簿」と言う名称で、刑事課知能犯捜査係に対する詐欺事件など告訴・告発事件の相談記録は、「告訴等相談簿」と言う名称だったと思います。

 

先ほど申し上げたとおり、警察では事件相談を受けると、すぐに相談簿を相談等管理システムに入力し、所属長まで持ち回りで決裁を受けることが決まっています。そして相談簿を入力した段階で、自動的に番号が発行される発番システムなので、事件相談をしたにも関わらず、「相談簿が存在しない」とか、「相談簿の受理番号がわからない」という事態は、通常、考えられないことなのです。

 

(余談になりますが、以上のような事情からあくまでも私個人の意見としてお聞きいただきたいのですが、太宰府市主婦暴行死事件の相談簿が、相談当時に適正に作成されていたのかどうか、署長まで持ち回りで決裁を受け、捜査幹部が具体的に事件指揮していたのかどうか、正直なところ疑問に思います。)

相談簿は「データベース」で管理されている

相談簿を登録する際に相談等管理システムへ入力する事項は、関係者や関係会社の氏名(名称)、住所(所在地)、電話番号、メールアドレス、使用車両のナンバー、口座情報など可能な限り詳細に及んでいた、と私は記憶しています。皆さんはその理由がお分かりでしょうか?

 

警察のあらゆる事件相談は、この「データベース」で管理されているため、事件相談を受けた際に同じ氏名の関係者が繰り返し事件の相手方として相談を受けていないか、つまり他にも余罪がありそうかどうかを「検索」すれば、事件化の判断がしやすくなるからです。また、相談簿に入力した情報が別の未解決事件を捜査する上で「突破口」になる可能性もあります。ですから刑事(捜査員)である以上、事件相談や相談簿を適切に取り扱わないことは怠慢だと言えるでしょう。

警察が事件相談に対応してくれない時、どうしたら良いのか?

過去に警察で捜査をしていた私が皆さんにこのようなアドバイスをすることは本当にお恥ずかしいことなのですが、警察の捜査怠慢が疑われる昨今、やむを得ません。以下に説明する「告訴相談の切り開き方~7つのステップ」を試してみてください。

事件相談が打開できる9つのステップ

 

1 相談した担当者の官職、氏名を聞く

2 相談後に「相談簿」の番号を聞く

3 複数の弁護士に相談する

4 他の警察署や他の課、他の刑事を探す

(管轄、担当という言葉に騙されない)

5 警察本部や検察庁に相談する

6 警察本部の広報課広聴係に苦情申出する

7 行政文書を開示請求する

8 公安委員会に苦情申出する

9 警察官の故意または過失によって損害を受けた場合、国家賠償請求訴訟をする

1 相談した担当者の官職、氏名を聞く

一般に警察官はたとえ名刺を持っていても、相手に渡したがらない傾向にあります。また「厄介な事件相談」から逃げたい警察官は、名前を名乗ることを渋る場合があります。電話でも、対面でも警察に事件相談した際は、後日、進捗を問い合わせるために、応対してくれた担当者の官職、氏名を必ず聞きましょう。

 

その官職、氏名を「麻布署刑事課知能犯捜査係主任の榎本さんですね?」などと復唱して、その場でメモを取りましょう。同じ苗字の警察官も中にはいますから、「他に同じ苗字の人はいませんか?刑事課の榎本さんは1人だけですか?」などと確認して、担当課・担当係、係長とか主任などの役職(官職)を忘れずに聞きましょう。相談した日時、場所(警察署)、相談の内容、経緯と共に必ずメモを残しましょう。

 

官職、氏名を聞き忘れたり、メモに残しておかないと、万一、相手の警察官が不誠実だった場合、私の友人のケースのように相談簿が登録すらされていない可能性があります。事後に警察と紛争になった場合、「そのような相談は受けた事実がありません」と抗弁されるおそれがあります。警察の誠実な事件対応を促すためにも、必ず聞きましょう。

2 相談後に「相談簿」の番号を聞く

後日、担当者に電話して、相談簿の受理番号を聞き、メモに残しましょう。受理番号は教えてもらえます。これは「警察があなたの相談を受理した」という事実を担保するためです。「相談受理」は、あくまでも「あなたの事件相談を聞きました」という趣旨であって、「被害届の受理」や「告訴状の受理」とは異なります。内容によっては事件化が難しいケースも考えられますが、相談簿が入力されていないと被害の受理も見込めません。警察の誠実な事件対応を促すためにも、必ず聞きましょう。

3 複数の弁護士に相談する

告訴相談のように込み入った事件相談は、訴訟の専門家である弁護士さんがいるとスムーズです。逆に言うと、弁護士さんが代理人としてついていない場合、証拠の収集や参考人の聴取などに刑事が手間取るため、事件相談から告訴受理までかなり時間を要することが多いです。告訴状などの必要書面を弁護士に代わって刑事が一から作成することになるからです。

 

弁護士さんも専門分野はそれぞれ異なります。刑事事件がお得意な方もいれば、あまり得意でない方もいらっしゃいます。事件に対する見解も様々ですので、一人の弁護士さんだけで諦めることなく、ぜひ複数の弁護士さんに相談されてください。

 

しかしながら、事件相談や告訴をする際に弁護士さんへ委任しないと警察が事件を受理できないかと言うと、もちろんそうではありません。詳細は申し上げられないのですが、私が当時、担当した告訴相談で2件、記憶に残っている事件があります。

 

1件は、データベース上は暴力団として未登録だが、実質上はある暴力団の若頭補佐(だったと記憶しています)が、経営者から約1億円相当を騙し取った詐欺事件です。約1億円を騙し取られたため、弁護士さんへ依頼する費用が捻出できないという気の毒なご事情でしたので、告訴相談の段階から私が弁護士の代わりに告訴受理に至るまでの証拠を積み上げて、告訴状を作成し、告訴事件として受理しました。

 

もう1件は、ある著名人が約2千万円(だったと記憶しています)を詐取した嫌疑の詐欺事件です。当時の私としては積極的に告訴受理したかったのですが、被害者が敢えて弁護士に依頼せず、右翼団体や暴力団関係者の「事件師」に依頼して、その著名人の事務所まで「追い込み」を掛けていたため、告訴相談がスムーズに運ばず、結局は他府県の警察署へ事件相談に行きました。

「事件師」や「元刑事」による「非弁行為」に要注意

「事件師(事件屋)」とは弁護士の資格を持たずに、事件やトラブルの仲介・示談で利益を得る裏稼業です。弁護士法第72条では、弁護士ではない者(非弁護士)が報酬を得る目的で、法律事件に関して法律事務を取り扱うこと、法律事件に関する法律事務の取り扱いの周旋を業として行うことを「非弁行為」として禁止しており、第77条には罰則(二年以下の懲役又は三百万円以下の罰金)もあります。

 

「弁護士法第72条 非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止」の条文をチェックしておきましょう。

弁護士法

第72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)

弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

このように弁護士以外が報酬を得る目的で「告訴事件の代理人」になることはできません。「事件師」や「事件屋」だけでなく「元刑事」や「元警察官」であっても、弁護士の資格がなければ、報酬を得る目的で訴訟事件の仲介はできませんので、お気を付けください。頼れる弁護士さんを探し出すのがベストです。

4 他の警察署や他の課、他の刑事を探す

(管轄、担当という言葉に騙されない)

一般の皆さんは警察に被害の相談をしたのに、たらい回しにされたり、事件を受理されなかったりすると、「もう無理だ、騙された私が悪いんだ」と間違ったストーリーを信じ込んでしまいます。その虚しさ、徒労感、怒りは大変なものだと思います。

 

しかしながら、前回の記事でもお話ししたとおり、担当刑事の技量は人によってまちまちですから、告訴受理に関して「一人の刑事がNO」と言っても、「他の刑事がYES」と言う場合もあります。弁護士さんについて説明したように、複数の専門家に相談してみると違った光景が見えることもあります。

 

実際、先ほどお話しした2件のケースは、たまたま私が事件番だったので相談受理したのですが、もし私と同じ係の他の刑事が事件番だった場合、相談受理すら難色を示すような事件でした。過去の私は他の警察署や他の課が断った告訴事件の相談を受けたり、告訴相談から告訴事件として正式に受理、事件捜査したこともありました。理由は犯人が悪質だと私が判断したからでした。ですから、諦めずに他の警察署や他の担当刑事を探してみることも一つの方法です。

5 警察本部や検察庁に相談する

告訴相談に行った警察署、担当刑事が全く頼りにならない、話にならない場合は、警察本部の捜査二課(聴訴室など)に相談する方法もあります。警察本部の捜査二課とは、警察署の刑事課知能犯捜査係(各都道府県警察で名称が異なる場合があります)の主管課になります。警視庁の場合、捜査二課聴訴室が告訴相談を受理する専門の部署でした。お住まいの地域、会社の所在地を管轄する警察本部の代表電話から問い合わせてみてください。

 

また、第1回記事の「告訴・告発と事件送致」でお話ししたとおり、警察が告訴事件を受理したときは必ず捜査を遂げて検察庁へ送致することが刑事訴訟法で義務付けられているところ、警察を飛ばして、検察庁へ直接告訴を相談する方法(直告などと呼ばれているようです)も残されているので、弁護士さんと相談してみてください。

 

テレビでは解説されない刑事事件

企業犯罪VS知能犯刑事

麻布署6年の研究と発見 第1回

https://www.kibiinc.co/blog/2024-11-22

6 警察本部の広報課広聴係に苦情申出する

警察の捜査が怠慢だと思われる場合、警察本部の総務部(広報課広聴係など)に苦情を申し出る方法もあります。警察本部の代表電話から問い合わせてみてください。

7 行政文書を開示請求する

情報公開については警察庁のリンクを参考にしてください。

https://www.npa.go.jp/policies/disclosure/notice/index.html

8 公安委員会に苦情申出する

参考に東京都公安委員会の苦情申出制度をご覧ください。

https://www.kouaniinkai.metro.tokyo.lg.jp/osirase.html

9 警察官の故意または過失によって損害を受けた場合、国家賠償請求訴訟をする

このようなことは警察として決してあってはならないことなのですが、「警察官の故意又は過失によって損害を受けた」場合は、国家賠償請求訴訟を起こすことも弁護士さんとご相談ください。

 

「国家賠償法第1条 公権力の行使に基づく損害の賠償責任、求償権」の条文をチェックしておきましょう。

国家賠償法

第1条(公権力の行使に基づく損害の賠償責任、求償権)

国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

今回の記事の最後に、よく質問される項目をFAQ形式でお答えします。

FAQ1「警察へ告訴相談へ行くことについて、相手方に事前予告した方が良いのでしょうか?」

わざわざ相手方に予告する「優しさ」も「脅し文句」も一切、必要ありません。相手に余裕や隙を与えることなく、黙って警察へ相談に行きましょう。予告してしまうことで、相手に「逃走」や「証拠隠滅」などの機会を与えてしまうからです。

FAQ2「私が騙された事件と相手の詐欺師について、注意喚起のためSNSで拡散したいのですが、どう思いますか?」

SNSへの拡散は、気分的には「燃え上がる」ので、一見、良いことのように思われるかもしれません。しかし「炎上」した結果、「火の粉」があなたに飛び掛かり、「火傷」をしてしまうリスクがあるので、はっきり申し上げて私はおすすめ致しません。相手に「逃走」や「証拠隠滅」などの機会を与えてしまうことにもなります。先ほどお話しした「告訴相談の切り開き方~7つのステップ」で警察の捜査や弁護士さんに任せた方が賢明かと思います。

 

特に注意していただきたいのは、ご自身が「SNSで拡散する行為」が、「名誉毀損罪」「信用毀損罪」「偽計業務妨害罪」などの「犯罪」として問われるリスクがあることです。「詐欺罪 VS 名誉毀損罪」の泥仕合となってしまい、相手から「SNSで誹謗中傷されたせいで、会社の信用が傷つき、売り上げも激減したので、支払いができなくなった。だから詐欺ではない」などと抗弁される可能性もあります。

 

念のため、「刑法第230条 名誉毀損罪、第233条 信用毀損罪・偽計業務妨害罪」の条文もチェックしておきましょう。

刑法

第230条(名誉毀損)

公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

 

第233条(信用毀損及び業務妨害)

虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

最も避けていただきたい「最大のリスク」は、相手方に逆上されて、ご自身やご家族、社員さんなどに対し、相手が報復や仕返しに出てしまう事態です。詐欺師はいわゆる凶悪犯罪の輩と毛色は異なりますが、前回記事の「構造的知能暴力事件」でお話ししたとおり、「知能犯」と「暴力犯」は表裏一体、鏡の関係です。一般人のあなたが「捜査員」のような気持ちで盛り上がってしまいますと、脇が甘くなりますので、くれぐれもご注意ください。

 

「家族が被害に遭いました。どうすれば助けられますか?」

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麻布署6年の研究と発見 第4回

https://www.kibiinc.co/blog/2025-6-11

 

組織的な詐欺事件であるほど、暴力団などの反社会的勢力が必ず登場しますので、「安全第一」で警察に任せてしまった方がよろしいと思います。お仕事上、どうしても利害関係者に注意喚起する必要がある場合は、信頼できる人にだけ個別に連絡を取って、委細はあまり深く話さず、注意を促した方が良いでしょう。

FAQ3「私が騙された事件と相手の詐欺師について、注意喚起のためメディアにリークしようと思うのですが、どう思いますか?」

FAQ2の回答とほぼ同じです。

 

リークすることのリスクについて、わかりやすくパワハラの事例でお話ししてみましょう。企業のパワハラ調査は当事者を異動、隔離して、パワハラ被害者の安全を確保し、情報源の秘密を守った上で、少しずつ事情を明らかにして行くのが鉄則です。しかし、当事者を異動や隔離もせず、パワハラ被害者の安全も確保しないで、情報源が誰だったか漏洩してしまうと、一体どうなるでしょうか?

 

これは実際に私がある民間企業さんで目の当たりにしたケースなのですが、パワハラ上司はパワハラ通報されたことに激昂して、同じ職場の他の部下に対して八つ当たり(報復)を始めます。企業がパワハラ通報を粗雑に処理してしまったために、かえってヒートアップしてしまい、その様子に呆れた人たちは離職して行くことになったのです。

 

一方、警察は被害者の安全や秘密を守った上で秘匿捜査する専門家集団です。マスコミの記者さんたちは、他の一般企業の方々と比べると「保秘」の専門家であると言えるのですが、世の中には「新聞ゴロ」と呼ばれる輩も存在し、情報源がどこから漏洩するかわかりません。ご自身の安全がちゃんと確保できるかどうか、考えておいた方が良いでしょう。ただし、被害者が多数いらっしゃる場合など、メディアで報道してもらうことで世論を動かすことのメリットはあると思います。

FAQ4「警察に相談するとき、刑事さんに上手く話が伝わっていないようなのですが、何か良い話し方はありますか?」

刑事は事件現場で一般人から事情聴取することに慣れていますので、基本的には問題ないと思うのですが、被害に遭われた方は、興奮して要点を上手く伝えられないことがあります。次の3つを意識してみてください。

1 可能な限り結論から話す

2 結論の根拠、理由、背景を話す

3 「客観的に明らかな事実」と「主観的な推測や印象、意見」を分離して話す

以上、今回は「なぜ、詐欺事件の捜査は進まないのか?~告訴相談の切り開き方」「疑惑の相談簿」「詐欺事件の告訴相談をしたのに、何の記録にも残してないって、刑事さんそれってどう言うことですか?」「告訴相談の切り開き方~7つのステップ」「私が騙された事件と相手の詐欺師について、注意喚起のためSNSで拡散したいのですが、どう思いますか?」などについてお話ししました。

 

次回は「どのように詐欺師を見分ければ良いのか?~詐欺師の見分け方」「あご師」「黒詐欺」「オフィス振り込め詐欺」「詐欺師はラウンジにいる」「地面師詐欺グループと暴力団のジョイントベンチャー」などについて、お話しします。

 

危機管理・BCPの担当者さまから、ご質問、ご相談やご意見などお待ちしております。

参考文献

『大コンメンタール刑法 第13巻〔246条~264条〕』大塚仁+河上和雄+佐藤文哉+古田佑紀=編(青林書院)

『大コンメンタール刑事訴訟法 第4巻〔189条~246条〕』河上和雄+中山善房+古田佑紀+原田國男+河村博+渡辺咲子=編(青林書院)

『刑法各論』安西溫=著(警察時報社)

『刑事訴訟法(上)』安西溫=著(警察時報社)

『企業犯罪への対処法 刑事事件のリスクマネジメント』小林英明=編著(中央経済社)

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記事の最後に

スライドを16枚を添付します。

昨年の講演で用意した資料です。

2024年10月27日

NAHOの会(杉並区発達障害の子をもつ親の会)主催講演

『元刑事が見た発達障害 当事者と家族が巻き込まれる犯罪の手口と対策』

https://www.kibiinc.co/blog/2024-10-31

どうぞご覧ください。

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